Liner Notes

 前作『あの時見た空』から10年余。ペーパーバックの6作目となるニューアルバム『GET OVER』がようやく完成した。

 ペーパーバックのfacebookページの2015年9月19日の投稿に「本日はニューアルバムに向けてレコーディング···」との記載があるので、約5年半の歳月をかけたことになる。
 本来はもっと早くリリースする見込みであったが、なかなか進まない工程に、やはり目標が必要ということで、前身となる「NEXT」の結成から30周年となる2020年中のリリースを目指して作業を進めて来た。
 2020年1月に行ったミーティングでは、30周年記念として、レコ発ライブはもちろん、ニューアルバムを引っさげて遠征しようかなんていう話も出ていた。
 しかし、それからすぐ新型コロナウィルスの国内感染が報じられるようになり、またたく間に感染が拡大した。プロアマ問わすライブを行える状況ではなくなり、終息の先行きも分からなくなってしまった。ニューアルバムの制作も大幅に遅れ、2020年のリリースも断念せざるを得なかった。
 今回のアルバムタイトル『GET OVER』には、「乗り越える」「立ち直る」などの意味があるが、これはコロナ禍の前に決定していた。念頭に2011年3月11日に発生した東日本大震災からの復興があったのは言うまでもなく、今回収録された曲は全て震災後に作られたものである。
 しかし、コロナ禍という新たな試練を課せられた私達にとって『GET OVER』に別の意味が込められることになったのは単なる偶然だろうか。
 また、発災から丸10年となる「2021年3月11日」をリリース日とすることになったのも、運命だったのかもしれない。
 この10 年で音楽業界を取り巻く環境も大きく変わり、CDから配信、それもダウンロード販売からサブスクリプションへと変化しつつある。
 しかし、私達アマチュアバンドにとって、「CD」は活動の集大成としての「目に見える証」であり、また、ライブに来ていただいたリ、たまたま通りかかって聴いていただいた方々とを繋ぐ重要な媒体である。
 とはいえレコ発ライブも行えない現状を踏まえ、より多くの皆様にペーパーバックの楽曲をお届けするため、初めて楽曲配信にも挑戦することにした。

 詳しくは、このサイトに掲載された楽曲紹介を参照いただきたいが、収録曲の制作とレコーディングには、たくさんの音楽仲間に協力をいただいた。また、アートワークにおいては、絵画のみならず、様々な作品を手掛けるアーティスト金井あやさんに多大なる尽力をいただいた。

 それだけではない。30年という長きに渡ってバンドを続けて来られたことが奇跡とも言え、ライブに何度も足を運んでくださる皆様、ともに歩んできた音楽仲間、そして活動を理解してくれる家族に感謝をしなければならない。

 ペーパーバックの結成30周年となった2020年は、結成以来初めてライブを一度も開催することなく過ぎてしまい、2021年も今のところ活動を再開できる目途は立っていない。

 しかし、どんな困難もきっと乗り越えられる。
 周りに気兼ねなく大声で歌いながらライブを楽しめる、そんな日が一日も早く戻ることを共に願いながら、このニューアルバムを聴いていただければ幸いである。